学術手話通訳では,スライドで図表を提示しながら説明を行うことがよくあります。ここでは,日本の年齢別疾患発症率,医薬品の輸出入,医療機器の輸出入の3つのグラフを使いながら,日本の医療および医療産業の課題について説明しています。事前にこうした資料が得られる場合は,グラフが意味するところ,すなわちこのグラフから日本の医療や医療産業について,どのようなことが読みとれるのか,スライド内の解説と合わせて自分自身でよく理解しておくようにします。また訳出するときに,グラフを指し示したり,サイニングスペース上にグラフを再現させることが必要となりますので,(1)全体の話の流れのどのあたりでこのトピックのスライドが出てくるのか,(2)3つのグラフは1枚のスライドのどの位置に,何のグラフがあるのか,(3)グラフはどのようなタイプ(折れ線,棒,円など)で縦軸と横軸,グラフは何を表しているのか,について,頭に入れておくようにします。色分けされている場合は,色を訳出の際の情報として加えるのも通訳の受け手にとってわかりやすくなります(例:ガン/赤/グラフ)。グラフの形状や特徴の訳出では,CL表現を用います。