学術手話通訳ではこの場面のように,概念的で,さまざまな考え方を論じたり問いかけるような内容の談話があります。ここでは「制度的権威」と「人格的権威」の違いが対比して語られていますが,これらは一言でこうであるという説明がしづらく,ポイントがつかみにくい箇所でもあります。具体的な例がいろいろと述べられていますが,なにげなく訳出していると,それらの例が「制度的権威」なのか「人格的権威」なのか通訳者自身もよくわからないまま訳出することになります。事前準備の段階で,学校現場の中でいう「制度的権威」と「人格的権威」はどういうものなのか,通訳者自身が具体的なイメージを描きながら把握しておくことで,語られている内容の意味をしっかりつかんだ上で訳出することが可能となります。