アスペクト(aspect)
アスペクトとは言語学で使われている専門用語で,動作の持続性のことを言います。例えば,「言葉が広まるというのは,地を這うようにして,隣り合った地域で一方から他方へと言葉が広まっていくわけです。」という文の「広まっていく」を日本手話で表現するには,「広がる」の動詞の手話単語を,スピードを押さえた手の動きで表出することで,長い期間における変化であることを表す進行・継続のアスペクトを表すことができます。
このように,日本手話において文法的アスペクト(grammatical aspect)は,形態素(⇒形態素)の追加,手話動詞の動き自体の変化や,NM表現(⇒NM)によって,動詞が表す行為の様態(行為が完了しているかどうか,進行中かどうか,行為が開始したかどうかなど)を表します(松岡,2015)。